長い夜には手をとって
「凪子さんっ大丈夫!?」
「・・・あ、伊織君。はい、痛いけど、生きてる・・・」
お風呂じゃなかったのね、君は。
私は痛さに涙目になりながら、ヨロヨロと上半身を起こす。伊織君はたんたんと階段を上がり、両手を差し出して私を引き起こす。
「暗いから夜は危ないよなー、この階段。もう絶対手すりつけよう。ほら、俺に捕まって・・・手、ちゃんと背中に回さないとまた落ちるよ」
あううう、すみません。心の中で謝りつつ、私は彼に言われる通りにゆっくりと体を預ける。抱きかかえられるような格好になった時に、頭の上で伊織君が言った。
「あれ?凪子さんえらく熱くない!?」
「うんー・・・ちょっと発熱したようで・・・」
「えー、そりゃ大変だ。ま、とりあえず階段降りて・・・」
よっこらせ、と私を抱き上げて、伊織君は最後の3段くらいを軽々と降りる。痛さに顔を顰めながら、私はその力にビックリした。
あらあら、君ったら、力があるんですねえ!やっぱり男の人なんですねえ!って。
「あ、ありがと。いいよもう。重いから・・・」
「凪子さん重くないけどさ、そんなことより結構熱高め?薬飲みに起きた?」
「いや・・・喉が渇いて目が覚めて・・・」
自力で立って伊織君の腕から抜け出ると、私は冷蔵庫目指して歩き出す。体が重くて酷く重力を感じ、一歩踏み出すのにかなりの体力が必要だった。
私の後からスタスタと歩いて追い越して、先に伊織君が冷蔵庫から水を出してコップに入れてくれる。私は食卓に体を預けて、お礼を言って受け取った。