長い夜には手をとって
「姉貴、ここに入れてたの?」
「そう。しかも私、見つけたときに食べちゃってたのよ。それで綾に怒られて」
あははは、思い出したら笑えてきた。折角楽しもうとしたのに、凪ったら先に見つけて、しかももう食べちゃってたのー!?って、綾が怒ったのだ。私が階段の同じ場所、ここで笑っていたら、最後は綾もつられて一緒に笑い出したんだった。
それで二人で改めてチョコレートケーキを焼き、クリームやゼリーや砂糖菓子ででたらめにデコレーションしてワインを飲みつつ食べたのだ。
大きなチョコレートケーキで、舌が痺れるくらい甘かった。
「結局食べ切れなくて、そのケーキ。会社に持っていって、派遣仲間に分けたのよ」
私は壁の板を元に戻す。すっかり忘れていた。そんな楽しい思い出を。
壁を指で撫でる私をしばらく見ていたけれど、伊織君が、さて、と言った。
「上がろう、凪子さん。早く寝ないと」
「・・・そうだね」
よし、と気合を入れて体を持ち上げる。その後は休憩をせずに何とか階段を上がりきり、伊織君に支えられながらベッドへと入る。
「・・・ああ、疲れた。ごめんねー、伊織君。面倒をおかけしまして」
「いや、別に。水持ってくるよ。下の電気もつけっぱなしだし」
伊織君がそう言って部屋を出て行く。
私はベッドに横になって、ボーっとしながらカーテンが開けっ放しの窓の外を見ていた。
・・・綾・・・。今頃どうしてるかな・・・。