長い夜には手をとって


 私はそのまま眠ってしまっていたらしい。

 うつらうつらと眠りの入口を彷徨いながら、長い夢を見ていた。

 キラキラと星が輝く夜の草原で、一人で座り込んでいた。周囲には誰もいなくて、風は冷たく、私は体を震わせていた。

 どうしてここに。

 考えても判らない。私は不安になって、折角輝く星星を眺めることすら出来なかった。

 寒い。それに、ここは暗くて、寂しい―――――――――

 その時、遠くからゆっくりと近づいてくる人影を目にした。

 ・・・ああ、誰かいる。よかった。

 私は裸足で暗い草原を走る。その人に向かって。足に草露がついて濡れていく。着ている白いスカートにも雫がはねて、どんどん服が濡れていく。

 誰か、がそばに来た。

 私は言葉もなく手を伸ばす。

 その人も手を伸ばして、しっかりと握ってくれる。

 あ、温かい―――――――――

 私はつい笑顔になる。手のひらから伝わる温かさで、足元が濡れているのも気にならなくなった。

 その人が天を指差す。私は顔を上げて、夜空一杯の星に目をやった。



 朝日が差し込んで、その光が直接顔にあたり、眩しくて目が覚める。

 あ、朝か・・・。ごろんと上を向いて朝日から逃げると、私はそのままでふうと息をはく。いつもの私の部屋の白い天井がぼんやりと光で揺れている。

 長い夢を見ていた。熱が高い時ってよくわけの判らない夢を見るものだけど、昨日のは何だか良かったな・・・。幸せの匂いがするような夢だった。


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