長い夜には手をとって
ついでなのでいつもの町医者ではなくて総合病院まで行く事にする。私はタクシーに揺られながらぼうっと窓の外を見ていた。平日に休むのは久しぶりだ。町はいつもよりも閑散といているようで、見える光景が新鮮だった。
インフルエンザではなかった。だけどあの痛い鼻検査を久しぶりにされてしまって、私は結構凹みながら会計を待って椅子に座っていた。やっぱり大きな病院は会計の待ち時間が長い。
ボーっとしながら待つ。とにかくインフルでなかったことは良かった、そう思いながら。
携帯が鞄の中で振動する。開けてみてみると、菊池さんと伊織君だった。
水谷伊織の文字に心臓が反応する。
自分の気持ちをしっかり確認してしまった後なのだ。私は一度深呼吸をして、それからメッセージを開ける。
『病院行った?』
挨拶も何もない、簡潔なメール。男の子ってこうなのかな・・・。ちょっと考えて、でも確かに弘平もいつでもくれるのは簡潔なメールだったな、と思い出す。
返信。行きました。インフルじゃなかった。今会計待ちです。
絵文字を入れるかでしばらく悩み、やっぱり入れないことにした。何か照れくさくて。一度意識してしまうと、こうやって全部に影響するのが恋心の面倒くさいところだ。
すぐにまたメールが入る。伊織君。
『どこの病院?』
ん?と一瞬思ったけれど、深く考えずに病院の名前を入れて返信する。その後菊池さんのメールを開けて、風邪だって聞いたよ、大丈夫~!?という絵文字も華やかな文章を楽しんでいると、またメールが。
『迎えに行くから、待ってて』
「え?!」