長い夜には手をとって
「・・・あの、仕事が終わったあともスタジオに残ってるって聞いたの。家に帰るの遅らせてるって。・・・それは、じゃあ、どうして?そんなに帰るのが嫌ならここに住まなくてもいいのに」
それを聞くなり、伊織君は片手で自分の額を叩いた。ぺしっと音がして、私はビックリする。ううう~としばらく唸ってから、伊織君は片手で顔を隠したままで言った。
「―――――――三上が言ったんだな」
「・・・あの、うん」
「それでお昼の凪子さん、様子が変だったのか。三上はいい子なんだけど、言い方がちょっときついところがあるから・・・」
ぶつぶつと呟くように言っている。あの子の言い方がきつい?というか・・・それは、多分。私はソファーにあげた足の膝に顎をのっけた。
「多分ね、三上さんは伊織君が好きなんだって思うよ」
「え?」
「だから私に攻撃的なんだろうって思うよ。好きな男の人と一緒に住んでる女だから。今日も車の中で、歓迎しませんって雰囲気出してたし。今考えたら、最初に会った時からあの子私に無愛想なんだよね。やたらとじろじろ見られたのも、もしかしたらあの写真・・・ほら、伊織君が撮った寝顔の写真、あれを見てたんじゃないかなって」
伊織君は片手を顔から離して、目をまん丸にしている。
言いながら私は確信に近いものを抱いた。そうだ、あの子、伊織君が好きなんだろう。憧れか恋愛感情かは知らないけれど、きっと伊織君に対して強い感情を持っているはずだ。
「・・・え?」