長い夜には手をとって
「いやいや、それって普通に有り得ることでしょう?そんなに驚かなくても」
学生アシスタントが普段一緒にいるカメラマンに恋をする、そんなのよくあることだと思うんだけど。共に行動をするからこそ、馴染んで気になっていくものだろう。
本気でそうは思ってなかったのだろう。伊織君は何度か瞬きをして考え込み、コーヒーを忘れている。
「まあともかく、ね。三上さんがそう言ってたの。あの子は私と綾がトラブったのも知ってるみたいだった。だから嫌がる君に無理矢理私が―――――――」
「え?そんなことも言ってたのか?どうして知ってるんだろう」
言葉を遮って、伊織君は目を見開いた。
「あれ?それは伊織君が言ったんじゃないの?」
私が首を傾げると、伊織君はいやいやと手を振る。
「学生アシにそんなプライベートなこと言わないよ。先生には引っ越したことは言ったけど・・・」
口元に拳を当てて伊織君は考えこみ、やがて、あ、と言った。嫌そうな顔で。
「・・・鷲尾だ」
ああー、と言いながら、伊織君はガックリと肩を落とす。
「そう言えば鷲尾には話したことあったな~!出張続きの忙しい時期に何で引っ越しするんだ、て聞かれて、姉貴のこと話した~・・・。くそ、あいつお喋りだな」
鷲尾さんだったのか、三上さんにリークしちゃったのは。私としてもちょっと残念だったけど、もう仕方ない。
それより―――――――――