長い夜には手をとって
私はがっかりしてふらふらと家に帰り、出迎えた綾に世話を焼かれた。愚痴愚痴言う私に毛布をかけて、綾がぽんぽんとお腹をなでてくれていたのだ。安心した私が、眠りにつくまで。
「ねえ、そんな時には一緒にいてくれる、そういう優しい人と、私は恋がしたい」
そう言った拍子に、伊織君が瞼の裏に浮かんだ。
夜通しずっと手を握っていてくれたあの人が。
「弘平が努力するって言ってくれたのは、嬉しかった。ありがとう。だけど、きっとあなたは強引で強気のままだし、私はそれに流されてはこれは違うかもって思い続けると思う。だから、ダメ。あなたとはやり直さない」
「・・・わかった」
しわがれた声が聞こえた。弘平は、暗い目をして、だけど視線を外さずに私を見ていた。
「お前の―――――――ナギの気持ちは、判った。それに、もう会わないんだな?」
「うん」
「・・・了解」
弘平がコートを持って立ち上がる。そして歩きかけて、ふと足を止める。振り返って私を見た。
「色々、ごめん」
私はビックリした。だけどすぐに頷く。
「・・・恋愛関係では一方だけが悪いことなんて、そんなにないと思うよ。だから私も、ごめんね、色々」
弘平がちょっと笑った。そして片手を上げて歩いていく。
私は彼の背中がドアから消えたのを見て、ほーっと息を吐き出した。
・・・ああ、どっと疲れた・・・。
自分の体重が3倍ほどに増えた感覚だ。椅子に沈みこむような気がする。だけど、気分は悪くなかった。