長い夜には手をとって
「知らない男なのに、家に上げてくれたでしょう。その時に無用心だなーと思ったんだよね。この人大丈夫か?って。それで話してみたら、姉貴のことを怒るよりも心配していた。お金を盗られたことよりも急に居なくなったってことに傷付いてるみたいだった。へえ、いい人だなあ、と思って」
そ、そんなことを思ってたのか!?私は少なからずショックを受けながら伊織君が話すのを聞いていた。あの時の私は悲しみと怒りとで大変混乱していて、自分が何を話したのかはハッキリとは覚えてない。
「雰囲気が優しいし、泣くのを我慢してるのを見て、ダメだろ、って。この人を泣かせたらダメだろーって思ったんだ。姉貴何してくれたんだよ、って。それでせめて俺は悲しませたらダメだって。――――――そうだ、俺、本当はね」
急に伊織君が私を覗き込んで悪そうな顔で笑う。
「え?」
「同居するつもりなんてなかったんだよ」
「うええええ~っ!?」
ちょっと待ったああああ~!何だって、このヤロー!
私の絶叫&変顔を見て、彼はにやにやと笑っている。
「本当は姉貴のしたことを謝って、毎月振り込んでお金を返していこうって思ってたんだ。でもさっき言ったけど、傷付いて小さくなって縮こまってる凪子さんに惹かれたんだよね。この人と、もうちょっと近くで繋がるにはどうしたらいい?って考えて。ドキドキしながら同居を提案してみたけど凪子さんはやっぱり拒否したから、残念だったけどね。まあ仕方ないかーって。だから電話くれた時にはやった!と思った」
「そ、そんなことが・・・」
知らなかった、色々。