長い夜には手をとって
彼も立ち上がり、よっこらしょ、とかけ声つきでカバンを持ち上げた。そしてまたにっこり笑う。
「じゃあもし気が変わったり、姉から連絡があった場合は連絡下さい」
「え」
「俺の連絡先、置いていくんで」
カバンを漁って出した名刺をテーブルに置いて、じゃあ凪子さん、またー、と来た時と同じように、突然に彼は帰って行った。
テーブルの上に置かれた名刺には彼の名前と電話番号、写真スタジオのアドレス等々。
私は体から力が抜けてしまって、どすんと椅子に腰を下ろした。
この5日間で、姉には逃げられて、弟からは同居を申し込まれた。
しかも、どちらもいきなり。
こちらの都合なんて、まったくお構いなしで。
―――――――水谷姉弟・・・なんて奴らだ。