長い夜には手をとって
私はもうやけくそになって叫ぶ。それからハッとした。やだ、これってお隣に全部丸聞こえなのでは!?恥かしいったら・・・。
するとまたまたにっこー!と大きな笑顔をして、伊織君が言った。超至近距離で。
「じゃあさ、結婚しよ、凪子さん」
――――――――――へ?
私は目を見開いた。ついでに叫びそうになったけれど、驚きが強くて声は出なかった。
け、けけけけ、結婚ーっ!?
「・・・はっ・・・え、ええっ!?ちょっと、ちょっと伊織く・・・」
そんなサラッと簡単に!私は驚きが大きすぎて口をパクパクさせる。
「結婚しようよ、俺達さ。夫婦になって、本当の家族を作ろう。よく考えたら、最初からそうしたらよかったのかも。どうして俺は気がつかなかったんだ!」
「へ?ええと・・・君は一体何言ってるの?」
私は混乱したままで、体を仰け反らせて彼と距離を取ろうと頑張っていた。だけどぐいっと両腕を捕まえられて、体を固定されてしまった。上半身を傾けた伊織君はえらく色っぽい目で下からすくい上げるように見て、ねえ、と口付けをせがむ。
「凪子さん、ほら・・・」
「う・・・」
「ほーら」
彼の唇は目の前だ。くうう~!恥かしいよ!だけど私はやっぱりやけくそモードで目を瞑り、自分の唇を押し付ける。キスをしたままで、伊織君がくくくと笑った。
「結婚、オッケー?」