長い夜には手をとって
ど、堂本財閥!?って私でも知ってるよ!勿論知ってるよ~!経済雑誌とかにもよく出てるよね?端的にいって、私はドン引きした。いきなり目の前に本来雲の上の存在である大金持ちの、身内が座ってるってことが判ったからだ。
そんな人達、出会おうと思っても普通は無理だし、居たとしてもセレブ婚目当ての高級結婚相談所にしかいないんじゃないの!?何で君はここに、平気な顔して座っているのだ!
それに伊織君がってことは・・・勿論綾もだよねーっ!?えええー!そうなの!?この姉弟の動作や考え方が柔らかくて礼儀正しいなあと常々思っていたのは、間違いではなかったのか!つまりは、育ちの良さを反映してたってことよねえ!?
私の大仰天を普通にスルーして、伊織君は話す。
「で、とにかく、祖父が俺の幼少児に契約した信託財産があるんだ。それは30歳になると受益者、つまり、俺に渡される。だけど、思い出したんだよね。あの契約、受益には二つ条件があったんだ。30歳になった時か、もしくは――――――――」
伊織君がまたあの、悪そうな顔をした。
「――――――俺が、結婚した時」
私はぽかんとした顔で目の前の男性を凝視していた。
・・・伊織君が30歳になるか、もしくは・・・結婚した時。結婚って――――――――――私とか!?
「・・・ええっ!?」
「だから、凪子さんが俺と結婚してくれれば、直ぐにでも受け取れるんだよ。そしたら姉貴の分のお金もすぐに返せるってこと」