長い夜には手をとって


 お正月を一人で過ごすのは久しぶりだったから、私はその時はまた、未だに消息不明の綾を思い出して寂しがったりした。綾がいたら、こうやって過ごしただろうになあ!とか想像して。だけどそれも過ぎてしまえば普通の毎日で、家賃の心配がなくなったせいで気分は徐々に晴れやかになっていた。

 毎月6万の出費がなくなったのだ。毎月の貯金額をちょっと増やして、残りは買いたくても我慢していた物を買うようにもなった。

 お金の心配がないって素敵~・・・。

 それに最初は若干心配した、男性と住むということも、彼が言うようにほとんど接点がない状況ではちっとも何とも思わない。

 ほーんと、ただの同居人だ。それも、1ヶ月に2,3回顔をあわすかってくらいの。

 というわけでそれなりに機嫌よく過ごしていた1月の中旬、他の会社へ手伝いに貸し出されていた派遣友達の菊池さんと、社員食堂で久しぶりに会ったのだ。

「うわ~、塚村さ~ん!会いたかったよう~!」

 小走りに私が座るテーブルまで来て、菊池さんはテンションも高く前の席にトレーを置く。私も1ヶ月ぶりに会う同僚ににっこりと笑った。

「久しぶり~!もうお手伝いは終了?」

「そうそう、やっとね!事務で入ったのにいきなり販売に回されて心配だったしむかつきもしたけど、あっちは若干時給がよかったんだよね。耐えたかいがあったって、次の給料で思いたいわ~!」

 本当に嬉しそうに周囲を見回して、それから彼女は頂きます、と手をあわせる。聞けば手伝いに駆り出された販売所は食堂なんてなく、毎日お弁当持参で大変だったそうだ。


< 30 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop