長い夜には手をとって


 しばらく会わなかった間の仕事の話などをして、ご飯を食べ終わったころ、そういえば、と菊池さんが目を大きく見開いた。

「12月のあのこと、結局どういうことに落ち着いたんだっけ?問題なくなった、っていうのはメールで言ってくれてたけど、あの頃あたしバタバタしててちゃんと話を聞いてなかったよね」

「ん?ああ、ハウスメイトのこと?」

 私がそう言うと、彼女は大きく頷いた。

「綾さんはまだ見付かってないの?連絡もなし?それで、新しいハウスメイトが見付かったってことだよね?とりあえず家賃の心配がなくなったのは本当良かったと思うけど、どういう人なの、次の人は?」

 だだーっと一気に言って、彼女は好奇心溢れる目で私を覗き込んだ。

 そうか、忘れてた。私はお茶を飲んで喉を湿らせる。菊池さんに借金を断られてオーナーにも連絡がとれないってなった後、結局水谷弟と同居することになったとは話せないままで、彼女が職場異動してしまったのだった。

 一度、大丈夫なの?ときたメールには、問題はとりあえず解決したよ、と返しただけなので気になっていたのだろう。

 えーっとね・・・何から話そうか。しばらく悩む。だけど休憩時間ももうそんなになかったので、私は端的に話すことにした。

「あのあと、綾の弟が家に来たの。そんで綾が持ち逃げした分のお金を私に返すためにって、家賃とかの負担をしてくれることになったのよ」

「へえ~!弟!いたんだねえ、兄弟が。良かったじゃない、なんせ毎月の家賃が大事だからね、親元出たら」


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