長い夜には手をとって
「そうそう。助かったの。実際やつは仕事で出張が多くて殆ど家に帰ってこないし――――――」
私が寛ぎながらそう話していたら、目の前で両目を更に見開いて、菊池さんが遮った。
「え、えっ!?ちょっと待って塚村さん!帰ってこないって、もしかして・・・一緒に住んでるの!?」
「うん?うん」
「綾さんの弟と!?家賃を負担してくれるだけじゃなくて、住んでるの!?」
「そう。だから、彼が新しいハウスメイト」
私が頷きながらそう言うと、彼女は出来るだけ声を上げないようにか両手でパッと口を押さえた。目が大きく見開かれていて、元々目の大きい菊池さんの顔は妖怪といって正解のレベルだった。
「―――――ええーっ!じゃあじゃあ、今塚村さんはその子と同棲してるってこと!?」
・・・いや、だからちょっと違うのだ。
私は誤解を解くべくちょっと考えてから言った。
「・・・ほら、シェアハウスとかあるでしょ、最近?あんな感じだよ。個室はあるけど、食堂や居間なんかは共同で使うって感じ。本当にただ、同じ家で住んでるってだけ。帰宅時間も違うから、食事だって最初の2日間しか一緒しなかったんだもん」
「シェアハウス!?・・・あ、なるほど。そういうことか。じゃあ綾さんと今までみたいな生活ってわけじゃ――――――」
「ないない」
「ってことは、あんまり会話も」
「ないない」
「ってことは、勿論体の関係も・・・」
丁度口に含んでいたお茶を噴出すかと思った。危なかった。私は慌ててお茶を飲みこんで、菊池さんに噛み付く。