長い夜には手をとって
「綺麗なモデルさんも見れるし?」
「そうそう、綺麗な売れっ子モデルも間近で見れるし・・・って、おいー!そんなこと考えてないない。先生の写真とか、仕事中の姿を見るのが好きなのー」
「あははは」
自分のやってきたこと、やっている仕事を卑下するつもりはないが、私は羨ましかった。
誰かがする仕事に憧れて追いかけ、そばでそれを見ていられるというのは幸福なことだろうと思ったから。やがて追いつきたいと思って努力する、私はそんなことはなかったな、と思い返して。
「伊織君は・・・どんな写真を撮るの?」
俄然興味が湧いた私は聞いてみる。ちょっと見てみたいぞ。
彼は一瞬真顔になって私を見たけれど、カップをテーブルに置いて立ち上がった。ちょっと待っててと言って。どうやら部屋に作品をとりにいってくれるらしい。私はまたワインのお代わりを注ぎながら、ワクワクして待っていた。
「こんなの」
やがて戻ってきた彼が手渡してくれたのは、大自然の写真をおさめたスクラップブックだった。
「・・・おおー!」
私は立ち上がって居間の電気をつけ、蝋燭を吹き消した。幻想的な雰囲気が終わってしまうのは悲しいが、蝋燭の灯りでは写真がちゃんと見られない。
「それは昔のものだけど。でも自分でも気に入ってる作品だから」