長い夜には手をとって


 言いながら鷲尾さんは伊織君のスペース内に入って、彼の机を触りだす。私が理解できない間に探し物は見付かったようで、あったあったと声が上がった。

「これ、あなたですよね」

 鷲尾さんが手に持つ写真、Lサイズのそれには、確かに私がうつっていた。

 すっぴんで、眠りこける私が。

「―――――――え」

 思わず彼の手からそれを奪取する。

 あれ?あららー!?本当だ、これって私じゃないのー・・・!

 両手で写真持ってガン見する私を見て、鷲尾さんは、ん?と思ったようだった。恐る恐るという風に、声を出す。

「あーれー・・・?もしかして・・・撮られたの知らなかった、とか・・・」

 知りません。心の中でだけど、きっぱりとそう言う。

 でもこの写真の中で眠っちゃってる女は私だ!!間違いないよ!ちょっとちょっとちょっとー!??もーしもし、伊織君-っ!?これは一体どういう―――――――――――

 その時、後ろから走ってくる足音がして、同時に明るい声も聞こえた。

「凪子さん!良かった、持ってきてくれたんだ、ありがとう、助かり―――――」

 ました、と言いながら、現れた伊織君は写真を手にして突っ立つ私をみつける。それから、気まずそうな顔をしている鷲尾さんも。

 私の手元の写真が何かは、すぐに判ったらしい。

 顔を上げた私と目が会うと、彼は、小さな声で、ははは・・・と笑う。

「・・・見ちゃった?」

「・・・うん、見ちゃった」



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