長い夜には手をとって
大きな駅へ電車は滑り込む。ここで、菊池さんと待ち合わせだ。
彼女の可愛い笑顔を思い浮かべながら、私は改札口へと降りて行った。
パーティーは繁盛していた。
最近出来たばかりというバーを借り切っていて、薄暗い照明の中、着飾った男女が談笑している。途中でやってきた主役である津田さんに皆で歓声をあげ、花束を渡し、拍手する。
今では37歳くらいだろうか。私生活が充実しているからか、前よりもよく笑うようになった津田さんは、印象が柔らかくなっていた。皆さん、ありがとうございます、と簡単に挨拶をして、友達にカウンターへと誘導されていく。
「うーん、相変わらずいい男だわ~!!」
菊池さんが私の隣で、他の人と話す津田さんをじいっと見詰めながら言う。彼女は3杯目のカクテルを飲んでいて、すでに十分酔っ払っていた。声が大きくなっている。
「本当だねえ。前から格好良い人だったけど、なんか優しい雰囲気になって更に男っぷりが上がってるよね~」
私は会場の暑さと人の多さに酔ってしまって、お酒はさほど飲まずにカナッペを齧る。菊池さんは津田さんから目を離さずに言った。
「ほら、津田さんの奥さんてあの北支社の宝物とか呼ばれた仲間女史でしょ?本社でも別の支社でも有名だったもんねえ。有能で、馬みたいに働くのにえらく美人で、ちーっとも焦らないとか。津田さんが射止めるなんてって皆で盛り上がったよね~!覚えてるわ~!色々聞いたでしょ、塚村さんも!」