Even if ...【短編小説】
古ぼけた鉛
社会人5年目を迎えすっかり社会の荒波に揉まれ切った私は、
仕事終わりにバーでお酒を飲むことだけが唯一の楽しみと化していた。
今日は珍しく早く仕事が終わったので、
新しいお店を開拓しようと途中下車してふらふら歩いていた。
フィーリングで良さそうだと思ったお店に入ってみると、
ジャズがBGMで流れていてとても落ち着いた雰囲気のバーだった。
アルコールが回って悪態をついたり暴れたりなどする変な客もいなく、
一安心しながら私はカウンター席に座って注文をした。
最初の一杯はジントニックといつも決めている。
そのお店の方向付けが分かるからだ。
……というのもあるし、
初めてバーに入った時に最初に飲んだのがジントニックだから、という理由もあったり。
< 1 / 23 >