【coat.】



「ありがと」

「いやいや。山さんさ、かわんないね」

 何故か白石くんは笑いを堪えているように見えた。


「え? 何が?」

 今の行動のどこが面白かったんだろう。


「アレ」

 口元を手で隠しながら白石くんが指差したのは、ガラス戸。


 闇に沈む透明なその表面に、電灯に当たるとくっきりと手形が見えた。




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