【coat.】
駅ビルのクリスマスツリーは、首が痛くなるほど見上げなければ天辺の星が見えない。
でも、今そんなものを見ている余裕はない。
早歩きと小走りの間の速さで人込みを擦り抜け、改札を通過しホームに入ると同時に目当ての電車の扉が開いた。
走って乗り込んで。
すぐに扉が閉まって、電車は動きだした。
「よかった、間に合った」
「ギリギリだったね」
荒い息のまま冷たい扉にもたれ、口を開いた。
30分待ち続けるのは、免れた。