【coat.】



 駅ビルのクリスマスツリーは、首が痛くなるほど見上げなければ天辺の星が見えない。

 でも、今そんなものを見ている余裕はない。

 早歩きと小走りの間の速さで人込みを擦り抜け、改札を通過しホームに入ると同時に目当ての電車の扉が開いた。


 走って乗り込んで。

 すぐに扉が閉まって、電車は動きだした。


「よかった、間に合った」

「ギリギリだったね」

 荒い息のまま冷たい扉にもたれ、口を開いた。

 30分待ち続けるのは、免れた。




< 32 / 88 >

この作品をシェア

pagetop