【coat.】



 白石くんと反対の方向を向き、一歩踏み出す。


「あっ……のさ、」


 白石くんの言葉が、後ろから私を掴んだ。

 掴んで放さない。

 絡めとられて、逃れられなくなる。


 振り向くと、白石くんはさっきと同じ位置のままだった。

「……ごめん、なんでもない」

 白石くんは、何かを言えなくて辛そうだ。


 言っちゃえばいいのに。

 そしたら、楽になれるのに。




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