君が嫌い
『絵梨花お嬢様がご迷惑をおかけして申し訳ございません。お嬢様の代わりにこのセバスチャンが謝罪申し上げます。』


玄関の前で深々とお辞儀をする黒スーツで細身の老人男性。
白髪とおでこのシワが目立つその男性。


『この人がかれ……』


『私の家に仕えている執事のセバスチャン。』


この状況をいち早く教えてくれた眠そうな彼女が重い瞼を擦りながらいつの間にか俺のすぐ後ろにいた。


なんだ、彼氏じゃなかったのか。
てっきり歳の差婚的なあれなのかなって思ったけど俺の早とちりだったらしい。


……執事?
執事ってあの?


『君の家ってお金持ちだったの?』


『そうだけど……気付かなかった?』


自分の知らない事実を何故知らないと言わんばかりの様子で見つめてくる。
うん?俺が忘れているだけなのか?


いや、前に気付くようなイベントなんて無かったはず。
きっと酒に酔っている彼女の勘違い。

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