君が嫌い
『ははは、なにやってんだろ俺……』


若干湿ったマフラーを見て思う。


冷静に考えて俺があの場から走り去る理由なんてなかったのに。


もしかして彼女が他の誰かと仲良くしているのに嫉妬していたとか?


いや、そんな感情じゃない。
もっとこう安堵というかホッとしたというか彼女の笑顔を見た時そんな感情だった気もする。


ただそれと同時にどこか遠くへ行ってしまう彼女に対して寂しさを覚えたのも事実なんだけど。


結局嫉妬していたのだろう、俺の嫌いな人なのに。
彼女とこれから接していくべきなのかどうか正直自分の気持ちが分からない。


……考えるだけ無意味か。
もう彼女が家に寄り付く事もなくなるだろうから。



『いらっしゃいませーー!美味しいラーメンはいかがですかー?』


今時こんな接客をしている店があるとは。
立ち止まるとラーメンの香りが鼻腔を刺激する。


『腹減った……。』


それよりも今日はクリスマスイブ。
こんな辛気臭い日にしてはキリストも悲しむだろう。


久しぶりに出前でもとって豪勢な1日にしよう。
そうと決まれば早速出発だ。


ラーメン屋を素通りし真っ直ぐ家路に向かう。

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