君が嫌い
今すぐトイレに行くフリをしてコンビニでお金を下ろしに行こうか悩んでいたところ、何やら言いたそうにしているお嬢様。


『どうしたの?ゆっくりで良いよ。』


無意識に自然と出てしまった言葉。
どうして俺は彼女に優しく接したんだろう。


『ずっと……この間の事ちゃんと謝りたくて……。』


この間の事とは多分初めてあった日の事を指しているのだろう。


何について謝りたかったのか分からなかったけど1つだけ言える。


『もういいよ。別に気にしてない。』


声を震わせ瞳に涙を溜めながら謝ろうとする人に悪い人はいない。


彼女の顔を見ているのがとても苦しかった。
いつか見た誰かの顔に似ている気がして。


「後でちゃんと話すから」


彼女がさっき言ってたのはこの事だったのか。
俺に謝りたかっただけだったんだ。


それなのに治療費の請求と勝手に決めつけて彼女の話も聞かず、ただ嫌いって理由だけで突き放していた自分に嫌気がさした。


もっと早く彼女の話を聞いてあげられていたら彼女はここまで辛い思いをしないで済んだかもしれない。


だから悪いのは俺の方だよ。

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