君が嫌い
少しだけ彼女に対する考え方が変わった。
この人は蔑じゃない、ただ自分をうまく表現できないだけなんだと思うようになっていた。


何が原因でそうなってしまったのか分からないけど。


『いいの?許してくれるの?』


これだけ誰かの事を思って涙を流せる人なんだ。


『許すよ。だから泣くなよ。』


そんな心優しい人をいつまでも嫌いになんてなれない。


『うん……。ありがとう。うぅ……。』


『だから泣くなって……。』


相変わらず人の話を聞かないで今にも泣き出しそうだ。


『だって私許してもらえると思わなくて。……ってなんで笑ってるのよー!!』


泣きべそをかきながら言う姿があまりにも面白くてつい笑ってしまう。


大声で話しているから周りから注目の的になっている事も気付いていないようだ。
それが面白くてまた笑い出しそうになる。


一度は蔑だって遠ざけてしまったけど、今の彼女なら。


『なあお嬢様。俺たち……』


『これはこれは絵梨花お嬢様。挨拶に遅れて申し訳ございません。』

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