君が嫌い
自分が有利になるためにこの場所を選ぶ。
俺の警戒心を解くため友達と言って油断させる。
完全に俺が心を許したところで責任者を出してネタバラシ。
それが今日のシナリオだったんだ。


理由はきっと1週間前に俺がビンタした事への報復。
これだけお金持ちのお嬢様なんだ、自分のプライドが許せなかったのだろう。


『ちょっと席外すね。』


駆け足でどこかへ行くお嬢様。
俯いている俺にはどこへ向かったのか分からない。


でも大体検討はついてる。
今頃トイレにでも行って必死に堪えていた笑いが爆発している頃だろう。


「ずっと……この間の事ちゃんと謝りたくて……。」


彼女の言葉を思い出す。


最初から分かってた事じゃないか。
蔑とは分かり合えない事なんて。


それなのにどうして涙が止まらないんだろう。










『ちょっと待って勝也。どうして黙って帰っちゃうのよ。これじゃあお詫びが台無しになっちゃうじゃない。だから戻ろう?』

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