君が嫌い
手が触れられる感触を感じる。
お嬢様が手を握ってきたようだ。


あれだけの事をしてまだ物足りないと言うのか。
後なにをされたらこの人は満足してくれるの?


『……離して。』


『えっ?』


『離してよ!!』


強引に彼女の手を引き剥がす。


『ちょっと勝也私の話を……』


『後どれだけ俺を傷つければ気が済むの?もう俺は君にたくさん傷つけられたのにまだ物足りないって言うの?もうやめてよ。』


今の俺の顔はどんな顔をしている?
怒ってる、落ち込んでる、泣いてる。


きっとどれも違うだろう。
口角が上がっているのが分かる。


どうして俺はこんな状況なのに笑っているんだ、こんなに涙が溢れそうなのに。


『勝也……大丈夫?』


心配そうに俺を見つめるあの人。
だから俺はその顔が好きじゃないんだって。


だから俺は笑っているのか、心配させないように。
でもそれも今日で最後、もう俺は……


『さようなら。俺に君は救えない。』


12月を目前にした寒い夜のことだった。

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