甘くて苦い恋をした

「加瀬さん…」

「沙耶… 怖い思いさせたな 巻き込んでごめんな」

加瀬さんは私をギュッと抱きしめながら、耳元でそう呟いた。

私はプルプルと首を振った。

確かに、結城さんにあんな事をされててショックだったけど…
数分前までの恐怖心は、もうすっかり消えていた。

今、こんなに心臓がバクバクと音を立てているのは、大好きな加瀬さんの腕の中にいるからだ…。

そして、結城さんの言葉の意味を確かめたいと…
期待している私がいる。

私は顔を上げて、まっすぐに加瀬さんを見つめた。

「あの 私… 加瀬さんに聞きたいことが…」

「俺も沙耶に話したいことがある… けどその前に」

加瀬さんは私の首筋へと視線を落とした。

「え?」

「とりあえず、帰るぞ…」

加瀬さんはそう言って、私の手をギュと握った。


**


「あの… ちょっと加瀬さん! 何するんですか」

加瀬さんのマンションに着いてそうそう、私は浴室へと連れ込まれて、いきなり服を脱がされた。

“あいつの匂いがついてるから…”

加瀬さんはそう言って、私の体をシャワーで洗い始めたのだ。

そして、いつの間にか結城さんから付けられていた首筋の痕を、加瀬さんは上書きするかのように何度もキスでなぞってきた。

そんな嫉妬心剥き出しの加瀬さんを見て、思わず口にしてしまった。

「加瀬さん、好きです…」

言っちゃった…
もう後戻りはできない。

すると、加瀬さんはピタリと動きを止めて、私の耳元で呟いた。

「やっと言ったな…」

ちょっとイジワルな顔で加瀬さんが笑う。

「あの… 加瀬さんは私のこと」

「愛してるよ あの日に何度も言っただろ?」

「え… あの日って… んっ」

答えをもらえないまま、私は唇を塞がれていた。




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