甘くて苦い恋をした
「加瀬さん…」
「沙耶… 怖い思いさせたな 巻き込んでごめんな」
加瀬さんは私をギュッと抱きしめながら、耳元でそう呟いた。
私はプルプルと首を振った。
確かに、結城さんにあんな事をされててショックだったけど…
数分前までの恐怖心は、もうすっかり消えていた。
今、こんなに心臓がバクバクと音を立てているのは、大好きな加瀬さんの腕の中にいるからだ…。
そして、結城さんの言葉の意味を確かめたいと…
期待している私がいる。
私は顔を上げて、まっすぐに加瀬さんを見つめた。
「あの 私… 加瀬さんに聞きたいことが…」
「俺も沙耶に話したいことがある… けどその前に」
加瀬さんは私の首筋へと視線を落とした。
「え?」
「とりあえず、帰るぞ…」
加瀬さんはそう言って、私の手をギュと握った。
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「あの… ちょっと加瀬さん! 何するんですか」
加瀬さんのマンションに着いてそうそう、私は浴室へと連れ込まれて、いきなり服を脱がされた。
“あいつの匂いがついてるから…”
加瀬さんはそう言って、私の体をシャワーで洗い始めたのだ。
そして、いつの間にか結城さんから付けられていた首筋の痕を、加瀬さんは上書きするかのように何度もキスでなぞってきた。
そんな嫉妬心剥き出しの加瀬さんを見て、思わず口にしてしまった。
「加瀬さん、好きです…」
言っちゃった…
もう後戻りはできない。
すると、加瀬さんはピタリと動きを止めて、私の耳元で呟いた。
「やっと言ったな…」
ちょっとイジワルな顔で加瀬さんが笑う。
「あの… 加瀬さんは私のこと」
「愛してるよ あの日に何度も言っただろ?」
「え… あの日って… んっ」
答えをもらえないまま、私は唇を塞がれていた。