甘くて苦い恋をした
「抱いていい?」
頷くと、すぐに加瀬さんのキスが落ちてきた。
そして、服の隙間からはスルリと手が入ってきて、胸と太ももの辺りを同時に触れられた。
「加瀬さん…」
「悠真な…」
呼ぶ度に何度もいい直される…
でも、やっぱり恥ずかしくて、呼べなかった。
やがて、加瀬さんのキスが首筋へと移り、そのまま鎖骨から胸へと下りてきた。
「あっ」
胸の中心を強く吸われて、思わず声が漏れた。
「もっと声聞かせろよ」
加瀬さんの色っぽい声が耳に響いた。
そこから先は頭が真っ白で…
とにかく激しく愛されたということだけ…覚えている。
**
「加瀬さん… そろそろ、私、帰りますね」
夜の11時…
加瀬さんちのリビングでまったり過ごしてしまったけど…
終電にはまだ十分、間に合う時間だ。
「もう遅いし、泊まってけば?」
ソファーから立ち上がろうとした私の手を掴み、加瀬さんが私を引き止めた。
「でも、明日、同じ服だとまずいですし…」
「ああ だったら明日はちょうど車で行くし、出勤前に沙耶の家にも寄ってあげれるよ?」
「いえ それだと加瀬さんが大変になっちゃいますし」
「ふーん そんなに帰りたいのか… じゃあ、仕方ねーよな」
ちょっと拗ねたように加瀬さんが言う。
「まさか! 帰りたくなんてないですよ!」
「なら、初めから素直にそう言えよ」
加瀬さんがクスッと笑う。
「加瀬さん…」
「沙耶は遠慮し過ぎなんだよな… もっと甘えればいいのに」
私の髪を撫でながら、加瀬さんがポツリと呟いた。
「別に遠慮なんか…」
「ホントは俺にも、もっと聞きたいことがあったんじゃないの?」
「え…」
「雪乃のこと…」
「あ… は…い」
加瀬さんの言う通りだった。
ホントは凄く気になっていたけれど、
過去の話を無神経に聞いていいものかと、ちょっと躊躇っていたのだ。
「別に大した話じゃないんだけど、沙耶が聞きたいなら話すよ… 沙耶には聞く権利あると思うし」
「はい 聞かせて欲しいです。」
「じゃ、寝室で話そっか。今、俺の部屋着貸すから…」
「はい…」
過去の話だと分かってはいても、何だか胸のざわつきが止まらなかった。