甘くて苦い恋をした

「おはようございます! 今日は宜しくお願いします」

サクラガーデンに着くと、加瀬さんは早速、ホール責任者と打ち合わせを始めた。

今日のレセプションパーティーは、夕方5時からのスタートだ。
招待客100人を超す大きなお披露目イベント…
失敗は許されない。

私はパーティー用のドレスと靴を、二階の控え室に置いて、急いでヘルプに来ていた社員達と合流した。

**

午後になって、桜社長と専務の春樹さんが到着した。

“開店祝いの花の位置、専務に確認とっとけよ”

加瀬さんの言葉を思い出し、春樹さんの元へと向かった。

「すいません 専務… 開店祝いの花なんですが、飾る位置の確認をお願いできますか?」

「ああ そうでしたね。ちゃんとお偉方の花を目立たせておかないと後で煩そうですからね」

春樹さんはそう言って笑いながら、玄関ホールまで来てくれた。


「じゃあ、この丸木商事の胡蝶蘭を前に出して、こっちを下げましょうか…」

「分かりました」

春樹さんと一緒に、花の位置を動かしていると…
ピンクのパーティードレスに身を包んだ女性が、ひとりでお店へと入ってきた。

お客様にしては、まだちょっと早い時間だ。

「あれ 雪乃?」

春樹さんは女性を見て、そう声をかけた。

雪乃?
一瞬、ドキリとしてしまったけど…
まさかね…

「あっ 春樹さん」

彼女はにっこり笑いながら、こちらへと歩いてきた。

「随分、早く来たね…」

「そうなの おじ様に、紹介したい人がいるから、ちょっと早くきなさいって言われて」

「親父が? こんな日にお見合いでもさせる気か?」

「さあ…」

二人は顔を見合わせて、フフっと笑った。

「あっ 高本さん、紹介しますね。彼女は僕のいとこの仙道雪乃さんです」

「初めまして… 仙道雪乃です。」

春樹さんの隣で雪乃さんが微笑んだ。

可愛くてスタイルもよくて、女の私でも思わずドキッとしてしまう。

「あっ どうも初めまして アクラスの高本と申します」

私は名刺を差し出しながら挨拶した。

「えっ… アクラス!? あ、あの、もしかして」

雪乃さんが身を乗り出して、私に何かを言いかけた時だった…

「おー 雪乃じゃないか~」

桜社長が加瀬さんを連れて登場した。

と、その瞬間、加瀬さんと雪乃さんが同時に声を上げた。

「雪乃!」

「悠真!」

私は見つめ合う二人を見て確信した。
彼女が、加瀬さんが愛した雪乃さんなのだということを…

まさかこんなことになるなんて…
言いようもない恐怖心が襲ってきた。



















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