甘くて苦い恋をした
番外編~中岡side~

「え!! 何で高本さんがいるの?」

俺は思わず声を上げた。

骨折で休んでいる加瀬のマンションを訪ねたら、何故か後輩の高本さんがいた。

「あの… これはその… 違うんです!」

必死に首を振る高本さんの横で、加瀬はしれっとこう言った。

「付き合ってるからに決まってるだろ」と。

「え… そうなの!?」

ポカンとしながら彼女を見ると、「すみません」と言ってコクリと頷いた。


***

「しっかし、おまえも水くさいよな~ 何で隠してたんだよ~」

高本さんが隣の寝室で寝た後に、俺はビールを飲みながらそう言った。

「別にイチイチ報告する義務なんてねーだろ」

加瀬はウーロン茶を飲みながら素っ気なく答えた。
俺が二人の時間を邪魔したせいか、加瀬は少し機嫌が悪い。

「いやいや、おまえが言わないからさ~ 俺、高本さんに余計なこと言っちゃったよ」

あれはマズかったよな…と思い返していると、加瀬が恐ろしい顔で俺を見た。

「おまえ、沙耶に何言ったんだよ」

「えっ? あー おまえが雪乃ちゃんにベタ惚れだったっていう話と… 別れた後、おまえが暫く荒れてたっていう話だよ」

「マジかよ… ふざけんなよ」

加瀬が大きくため息をついた。

「いや、ごめん、ごめん。高本さんが訊いてくるもんだからついポロッとさ… やっぱマズかったか」

「マズかったよ… おまえも知ってるだろ? 俺が高本と一緒に雪乃の物件担当してたこと…」

「あー それな… 俺はてっきり雪乃ちゃんとヨリを戻せたんだと思ってたよ… つうか、おまえこそ高本さんと付き合ってたなら、何で元カノの依頼なんか引き受けたんだよ… そんなの高本さんだって可愛いそうだろ」

「だよなあ…… 沙耶を傷つけたよなあ」

俺の言葉にシュンとなる加瀬。
意外と反省しているようだ。

「雪乃が桜社長の姪だったんだよ。社長にも頭下げられちゃってさ、断れるような状況じゃなくて… まあ物件探すだけならって引き受けたんだけど…さ」

加瀬は言い訳するようにそう言った。

「でも、雪乃ちゃんへの未練だって少しはあったんだろ? あんだけ好きだったんだから…」

「それはなかったよ。そんなことより、早く物件見つけて沙耶を安心させてやりたいっていうことしか頭に無かったし…」

「ふーん」

「でも、雪乃の提示してきた予算じゃ、正直どこもキツくてさ…必死で探したよ。何とか良いとこ見つかって、ようやくホッとした矢先、今度は雪乃が依頼をキャンセルしたいって言ってきてさ」

「え?」

何で?と尋ねると、加瀬が驚くべき事実を打ち明けた。











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