甘くて苦い恋をした
一日の仕事を終え、私達はオフィスへと帰ってきた。
「じゃあ、お疲れ… 報告書は俺がやっとくから帰っていいよ」
「はい ありがとうございます。お先に失礼します」
私はペコリと頭を下げて、勢いよく営業室を飛び出した。
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よかった、6時に間にあった!
ホッとしつつ、私は戦闘体勢へと入った。
私がかけつけたのは、近所のスーパーマーケットだ。ここのスーパーは毎週水曜日が定休日の為、前日の夕方6時になると一斉に安売りを始めるのだ。
私は揉みくちゃになりながらも何とかお目当ての品をゲットし、今日も満足しながらマンションへと帰ってきた。
夕食の準備も終わり、ホッと一息ついていると、タイミングよく玄関のチャイムが鳴った。
あっ、帰ってきた!
バタバタと玄関に駆けつけてガチャとドアを開けると、最愛の彼が立っていた。
「ただいま… 沙耶」
「お帰りなさい! 悠真」
私は勢いよく彼の胸に飛び込んだ。
そう…
私が抱きついているのは、二年前にプロポーズしてくれた加瀬さんだ。
いい匂い…
彼のスーツから仄かに漂う甘いムスクの香りを、じっくり堪能していると…
「今日はハンバーグだろ?」
悠真もクンクンと鼻を利かせながらそう呟いた。
「当たり… ひき肉ゲットできたから」
「そっか… 間に合ったんだ」
耳元でクスッと笑う。
「うん お陰様でね… ありがとね」
「どういたしまして」
悠真はそう言うと、私にチュッとキスをくれた。