too much



『昨夜はごめんね。
早くからうろうろしてたせいか、帰ったら爆睡でした。』



「これでどうかな?」

昼休みの社員食堂で、私は文面をあゆに見せた。



「え~…いくらなんでもこれは愛想なさ過ぎでしょ。それに、最後は敬語だし。」

「だめかなぁ?」

確かに短いし、愛想がないと言われたらその通りだけど。
敬語って程でもないけど、相川さんとはまだ知り合って間もないのにやけに馴れ馴れしいから、その拒否反応でついよそよそしくしたくなっちゃうのかもしれない。
「海斗」って呼んだり、タメ口でしゃべったり、これでも努力はしてるつもりなんだけど…



「そうだよ、飲みに行くことについても何も書いてないし…」

「それなんだけど…私、まだそういうのはしたくないんだよね。」

「どうして?」

「どうしてって……」



うまく言えないけど…
多分、まだ、相川さんのこと、そんなに好きって思えないから。
それどころか、好きになれる自信もない。



「じゃあ、それはスルーして、もうちょっと何か書いたら?
ほら、昨日はすごく楽しかったとか、また海斗の歌が聴きたいとかさ。」

「そうだね!そうするよ!」

私は、またスマホの画面に向かった。



『昨夜はどうもありがとう!
すっごく楽しかったよ!
海斗、歌がうまいんだね。
また海斗の歌、聴きたいな。
昨日は早くからうろうろしてたせいか、帰ったら爆睡しちゃったんだ。
LINE気付かずにごめんね!』



「これでどうかな?」

「う~ん…ま、とりあえず、さっきよりはマシになったんじゃないかな?
絵文字とかいっぱい使っといたら?」

「わかった。」

あゆに言われた通りに、可愛い絵文字や顔文字をいっぱい付けて、送信した。


< 64 / 141 >

この作品をシェア

pagetop