桔梗
言われたように正門まで歩く。
正門の前は比較的交通量の少ない2車線の車道で、歩道との間にガードレールや植木はない。
今日も待ち合わせや迎えらしい車が4台ほど歩道に寄せて停められている。
「あ、みっけ」
電話口でそう聞こえたと同時に、前から見覚えのある綺麗な銀髪がこちらに向かってくる。
「え、なんで?」
その銀髪の彼は、紛れもなく幸隆くんだった。
「きーこちゃん。おつかれ」
戸惑っている私を他所に、愛嬌のある笑顔で手を振ってくる。
「驚いた?」
いたずらっ子のように私の顔を覗き込む幸隆くん。
驚いている上に至近距離で綺麗な顔を目にすると声なんて出せなくて、黙って頭を縦にふった。
「かわいい〜」
策士だと分かっていても、そんな綺麗に微笑まれると、不覚にも鼓動は早まってしまう。