桔梗
気持ちとは裏腹に、相変わらず綺麗な銀色に目を奪われてしまう。長い間そこにいたのか、雨で濡れたその髪はより一層美しく艶めいている。
私の視線に気づいた銀髪の人物が顔を上げた。
目が合いハッとする。
「何しに来たの」
私の冷たい声に一瞬怯む彼。
だけど視線は交わったまま、お互い離さない。
「こんな所で働いてるなんて知らなかった」
その懐かしい優しい口調にも私の心はもう揺らがなくなった。
「帰って」
「なんで教えてくれなかったんだよ」
「帰って」
店に戻ろうと背を向けると掴まれた腕。
スタッフが感情のない目でじっと私たちを見つめている。
「離して」
「なぁ、もしかして…。働かされてんの?」