桔梗
3
「え、幸隆くんとご飯行ったの?!」
「うん」
「えー!あの桔子が?!
なんだかんだ言ってちゃっかりしてんじゃーん」
「ちゃっかりって…ご飯行っただけだよ」
相変わらずバサバサなつけまつ毛がついた大きな目を、さらに大きく見開いてオーバーリアクションを取る智夏。
「え?本当にご飯だけなわけないよね?
あんなイケメンと、ご飯だけなわけ…」
「ねえ、本当にご飯だけだから。学校まで迎えに来てくれて、ご飯食べて、家まで送ってもらって、解散」
「…え、え、ガチで言ってんの?」
「ガチだよ」
"鳩が豆鉄砲を食らったよう"
ということわざは、今の智夏のようなことを指してるんだな。
目をぱちくりさせて、口は半開きでフリーズしてしまった。
「え、何それ。あの銀髪が?美形銀髪チャラおとこが?」
ありえない、と独り言を繰り返している。
「意外と誠実だよね」
「ねえ、何そんなサラッとしてんの?高級車持ってて、イケメンで、その上誠実って…。今、桔子の目の前にどんな上物が転がってるかわかってんの?」
「上物って。私と幸はただの友達だから」
智夏の辞書に、"男女の友情"なんて言葉はきっと含まれていないだろう。
だけど、私にはある。
「え、いやいやいや、ちゃっかり、"ゆき"とか呼んじゃってんじゃん?!」
「それは向こうに頼まれたからで…
まずさ、私がチャラい男の人タイプじゃないの知ってるでしょ?」