少女に野獣。
「起きた?」


腕の中で身じろぐ美依恋に、自然と頬が上がる


虚ろな目で俺を見る彼女は、まるで親鳥を探す雛のようだ


「そんな顔をすると、口付けたくなるね」


瞼に唇を落としてそう言えば、驚いたように瞳を丸くさせる


ククッ……可愛い…


この柔らかな体も清らかな心も、全てが欲しい


もういっそ、無理やりにでもめちゃくちゃにしてしまおうか…?


キョロキョロと"どこ"と聞く美依恋


「俺の家だよ。今日から暫くの間は、ここで暮らすって言われただろう?」


思い出したのか、納得した美依恋を抱き上げ、リビングから隣の個室へ移動する


「暴れると、キスするよ」


ピタリと暴れるのをやめた


冗談ではない。いつだって俺は彼女に本気なんだ


だから、教えないとね?


俺が、どれだけ君の事が好きなのか


「ここが、美依恋の部屋だよ」


全面ガラス張りの、ベッドがあるだけの寝室


高層階なだけあって、街の光は殆ど届かない


「ねぇ、美依恋。俺の言う事、聞いてくれる?」


教えないといけないことがある


自分の身を護る為にも必要な事なんだ


だからどうか、聞き入れて欲しい


"凛胴の生徒会には関わるな"


意志の強い瞳のように、筋の通らない事が嫌いな美依恋


さすが、敦士さんの娘なだけある


だがこれは、君の為だから…


受け入れてくれるまで、俺はどんな手でも使うよ


糸夜side終



< 57 / 84 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop