Not Without Your Sunshine
そして中学は、町にあるもう一つの小さな小学校の生徒の人数が加わっただけで1組25人、2組24人の計学年で49人しかいない。しかし2クラスあるだけでもよかった方である。でなければ義務教育をクラス替えも体験せず、ずっと同じメンバーで終えるところだった。
私は3度のクラス替えもまた神頼みしていた。春斗と同じクラスになれるように。そしてありがたいことに1年、2年に引き続き今年も同じクラスになった。つまり、9年間も同じクラスだ。もう一人、天野悟というやつも9年間同じである。一つだけ残念なのは、小学1年生から中2年生までずっと1組を貫いてきたのだが、最後の3年生に限って2組になってしまった。他の人からしたらとてつもなくどうでも良いようなことであると思えるが、私の中のちょっとした意地がそのことを許さなかった。
春斗と今まで同じクラスに慣れただけでも十分幸せなことであるのに、私はさらに近くの席になれるように今、神に祈っているのである。よく人間は欲が出る生き物だというが、どうやらどれは本当のことであるようだ。
先ほど職員室まで座席表見を取りに行った担任の藤田先生が片手に丸められた大きな座席表の紙を持ち、教室に戻ってきた。藤田先生はゆるくパーマのかかった肩まである髪と、ふくよかな体が特徴的である。先生は皆んなの母親のような存在で、母が家にいない私にとっては先生の存在は本当に私を安心させてくれる。今日もいつものようにいかにも着心地の良さそうな長めのトップスと黒のズボンに身を包んでいる。先生は、丸められた大きな座席表の紙を広げ、黒板に張り出した。
「見たら黒板の前に溜まってないで、急いで自分の席に戻って。そしたら席移動するから。」
出席番号順の席で前から2番目という、割と前の席に座っている私は席を立たず、自分の席から目を細めながら自分の席を確認している。
大野...大野───、あった。一番窓側の後ろから2番目の席だ。隣は──大崎?春斗は...廊下側の一番前。全然私と真逆で凄く遠い...
私は心の中で大いに落胆している。仕方がない、ここで春斗の近くの席になれるなんていくらなんでも都合の良すぎる話だ。私は目の前に座っている大崎橙真を見つめた。するとあちらも自分の席を確認したのか、こちらに体を振り向けた。
「またお前の近くの席かよ。」
大崎は冗談っぽく嫌そうに言った。
「こっちのセリフだよ。これじゃあ席替えした意味ないじゃん。」
大崎とは今年初めて同じクラスになり、今までは全く関わりがなくお互い顔見知り程度の存在だったが、出席番号順が前後で最初の席も前後なので、始業式からこの3日間で少し会話を交わすような関係になった。
「夏は窓側暑いから嫌じゃない?」
「まあ。でも風も結構入ってくるし、後ろの方の席だし。席自体悪くはないかもな。煩いお前が隣にいることを除けば。」
なぜこいつは腹の立つことしか言えないのだろう。大志が言っていたことと全然違うではないか。
私は3度のクラス替えもまた神頼みしていた。春斗と同じクラスになれるように。そしてありがたいことに1年、2年に引き続き今年も同じクラスになった。つまり、9年間も同じクラスだ。もう一人、天野悟というやつも9年間同じである。一つだけ残念なのは、小学1年生から中2年生までずっと1組を貫いてきたのだが、最後の3年生に限って2組になってしまった。他の人からしたらとてつもなくどうでも良いようなことであると思えるが、私の中のちょっとした意地がそのことを許さなかった。
春斗と今まで同じクラスに慣れただけでも十分幸せなことであるのに、私はさらに近くの席になれるように今、神に祈っているのである。よく人間は欲が出る生き物だというが、どうやらどれは本当のことであるようだ。
先ほど職員室まで座席表見を取りに行った担任の藤田先生が片手に丸められた大きな座席表の紙を持ち、教室に戻ってきた。藤田先生はゆるくパーマのかかった肩まである髪と、ふくよかな体が特徴的である。先生は皆んなの母親のような存在で、母が家にいない私にとっては先生の存在は本当に私を安心させてくれる。今日もいつものようにいかにも着心地の良さそうな長めのトップスと黒のズボンに身を包んでいる。先生は、丸められた大きな座席表の紙を広げ、黒板に張り出した。
「見たら黒板の前に溜まってないで、急いで自分の席に戻って。そしたら席移動するから。」
出席番号順の席で前から2番目という、割と前の席に座っている私は席を立たず、自分の席から目を細めながら自分の席を確認している。
大野...大野───、あった。一番窓側の後ろから2番目の席だ。隣は──大崎?春斗は...廊下側の一番前。全然私と真逆で凄く遠い...
私は心の中で大いに落胆している。仕方がない、ここで春斗の近くの席になれるなんていくらなんでも都合の良すぎる話だ。私は目の前に座っている大崎橙真を見つめた。するとあちらも自分の席を確認したのか、こちらに体を振り向けた。
「またお前の近くの席かよ。」
大崎は冗談っぽく嫌そうに言った。
「こっちのセリフだよ。これじゃあ席替えした意味ないじゃん。」
大崎とは今年初めて同じクラスになり、今までは全く関わりがなくお互い顔見知り程度の存在だったが、出席番号順が前後で最初の席も前後なので、始業式からこの3日間で少し会話を交わすような関係になった。
「夏は窓側暑いから嫌じゃない?」
「まあ。でも風も結構入ってくるし、後ろの方の席だし。席自体悪くはないかもな。煩いお前が隣にいることを除けば。」
なぜこいつは腹の立つことしか言えないのだろう。大志が言っていたことと全然違うではないか。