Not Without Your Sunshine
幸いどちらもあまり人気がなく、立候補者が多すぎてじゃんけんをするということはなかった。しかし
最悪なことに、教室掃除が大崎と同じになってしまった。
またお前かよ、と隣にいる大崎に言おうとしたが、どうせまた嫌味を言われるだけだと思いやめた。


帰りの会も終わり私は隣の1組の教室を覗き、大志の席へと駆け寄った。大志はまだ帰りの支度をしているようだ。
「帰ーろ。早ようせいや。先帰っちゃうよ。」
「ちょっと待って。もうちょっとだから。」
私が大志の支度を待つのはもういつもの習慣になっている。また朝一緒に登校するときも大志は必ず遅刻してくるため、集合時間から何分か待つことも習慣になってしまった。
大志はやっと準備を終えたのか、よし、と言って勢いよく鞄を背負った。階段を降り、靴を履き替え、昇降口を出た。温かな風が頰をくすぐった。今年の春はなんだか例年より暖かい気がする。だから桜も今年は散ってしまうのが早いのだろうか。
私達はいつ通りのんびり帰り道を歩き、いつも別れる信号でボタンを押し、大志にまた明日、と告げた。すると大志は、
「じゃあね。あと、頑張れ。」
と少しにやけながら言い、帰っていった。私は歩いて来た道を振り向くと丁度春斗がやって来るのが見えた。と言うことは...。
春斗は私の隣に立ち、信号が変わるのを待った。信号が青になり、私達は横断歩道を渡った。そのまま帰る方面も同じなので春斗は一本道の右側を、私は左側を歩きながら並列して一緒に帰った。春斗と一緒に帰るのは久し振りだ。一年生の時はよく一緒に帰る機会があったが、去年はあまりそんな機会はなかった。
私達の間にあるこの一本道の距離がもどかしい。いつかこの距離が縮まるだろうか。いつか隣を歩ける日が来るだろうか。私はいつも一緒に帰るたびそんなことを思っていた。
私達は緊張のあまり何を話せば良いかよくわからなかったがとりあえず思いついたことを適当に言ってみた。
「久し振りに一緒に帰るね。」
「うん。」
私は早く分かれ道にたどり着かないようにするため、ゆっくりと歩いた。あちらも歩調を合わせてくれているようだ。
「そういえばウチら中学3年間同じクラスだから今まで9年間ずっと一緒だね。悟も。」
「あっ、確かにそうだな。すげえな、9年間って。」
彼の方を見ると笑顔を向けてきたため、私は恥ずかしいくなって下を向いてしまった。
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