Not Without Your Sunshine
「そういえば春斗はどこの高校行くの?」
「うーん、多分兄ちゃんと同じS高校かな。」
彼は特に深く考える様子もなくさらっと言った。
「そうなんだ。」
春斗はS高校に行くのか。私も早く志望校を探さなければ。できたらまた一緒の学校に行けたらなと少し考えてしまった。
そのあと私達は他愛ない会話をし、いつの間にか別れ際となった。お互いに手を振って別れを告げ、私は残りの帰り道を一人で帰ることとなった。私はその間、一年生のスキー教室の帰り道に一緒に帰ったことを思い出し、家に着くまでずっとにやけていた。はたから見たらただの変な人にしか見えないが、幸い、誰ににもすれ違うことはなかった。


スキー教室の帰り道は小雨が振っていた。私は傘を持っていなかったため、途中の信号までは大志に入れてもらっていた。信号にたどり着くと春斗がすでに信号待ちをしていた。私は大志と別れ、春斗と一緒に帰ることになった。
私達は相変わらず道の端と端を歩いていた。
「スキーの帰りで荷物もいっぱいあるのに帰り雨とか最悪。」
「お前、折りたたみ傘持って来てねーの?」
「忘れた。」
「しおりに書いてあったじゃねーかよ。」
「そこまでちゃんと見てなかったし、まさか降るとは誰も思ってなかったでしょ。」
彼は馬鹿だなあと言ってケラケラ笑っていた。
別れ道に差し掛かり別れを告げようと思ったところ、春斗がいきなり立ち止まった。
「傘貸そうか?」
「えっ」
一瞬、息が止まった気がした。彼が言った言葉を理解するのに少し時間がかかってしまった。
「いいよ、別に!そんな降ってないし、大丈夫だよ。家までもう少しだし。」
私は出来る限り傷つけないよう、優しく言った。
「いいよ、貸すよ。俺家すぐそこだそし、お前の方が遠いじゃん。風邪引いたら困るし。」
私はなんて返せばいいのかわからず、その場で立ち尽くしていると、春斗は傘を手渡してきた。
「あっ、ありがとう...。」
私は恥ずかしがりながら出来る限りそれを悟られないよう頑張って口にした。自分の胸に手を当てなくとも心拍がもの凄く速いのを感じた。
その後、私は家についてもしばらく顔が真っ赤なままだった。そして胸の鼓動も収まらないままだった。
私はまず春斗の傘をしっかり乾かし、その後、元の折り目に沿って綺麗に畳んだ。
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