社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編
「花菜、一緒に暮らさないか?」



健人さんの腕に抱き締められ、布団の中で目を閉じていた私に届いた言葉に頷けないでいた。



「花菜?寝たのか?」


「………。」


「花菜?」



目を閉じて寝た振りをした。健人さんの言葉は嬉しいけど………。



『覚悟して同棲とかしろよ。』



以前、藤村が過去の経験話をしていた。


健人さんと私はずっと一緒にいられるのか分からない。



『健人は二ノ宮グループの御曹司なんだ。』


『普通に結婚は出来ないんじゃない?』



長谷川さんの言葉に同意見だ。


この旅館もそうだけど、健人さんのマンションも私の暮らしてきた世界とは違いすぎる。


健人さんと私の世界は違いすぎる………。



「花菜、俺は一緒に暮らしたい。」



聞こえてくる健人さんの言葉に頷けない。聞こえない振りを続けた。



「花菜、俺は離れたくない。」



私も離れたくない。



だけど私と健人さんに未来はあるんだろうか?



この温もりを離したくない――――
< 169 / 240 >

この作品をシェア

pagetop