社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編
エレベーターの中で大きく息を吐き出した。


私の手を握っていた奥寺の手が離れていく。



「社長、怒ってたな。」


「うん。」


「やっぱり本気だろ、長嶺の事。」


「………親には反論できないよ、きっと。」


「それが社長のお家事情なんだろ。なんせ二ノ宮グループの御曹司。長嶺もわかって付き合ったんだろ?」


「………頭ではわかってた。でも社長の身内から反対されれば堪える。」



奥寺が私の頭をポンポンと叩いた。



「飲め。今日は飲め。潰れたら送ってやる。」


「潰れないから。」


「どうだか。ほら行くぞ。」



一階に到着したエレベーターから奥寺と並んで歩く。駅前のお店で待ち合わせだ。


同期でよく使う飲み会の場所だ。値段も料理もお手頃で美味しい。



「奇跡か………。」


「はあ?」


「玉の輿なんて奇跡なんだって。」


「ああ、そうかもな。奇跡かもな。」



奥寺と二人で予約したお店に向かった。
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