社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編
「ちょっと。」


「抱き締めたくなった。」


「健人さん………。」


「違う、健人。」


「あっ、健人。」



健人がクスクスと笑う声に釣られて笑いが込み上げてきた。


私から離れていく健人を振り返る。



「健人、幸せになろう。」


「ああ。」


「ずっとずっと一緒にいてくれる?」


「当たり前。」


「いつも一緒にいるのが当たり前になりたい。」


「今もだろ?」


「この先もずっと当たり前になりたい。」


「ああ。花菜も俺から離れるな。」



健人に抱き締められる温もりが続く、この幸せを噛み締める。



「………会社、休むか?」


「ふふっ、無理。坂本さんに怒られる。」


「…………俺も冬馬に怒られる。」



離れていく健人を見上げて笑い合う。



「一緒に行くぞ。」


「…………。」


「同期に話せよ、婚約したって。」


「………。」


「返事は?」


「………はい。」



結局、健人の思い通りだ。これからも健人には敵わないだろう。
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