社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編
番外編

健人の罠

「最近、一人だろ?」


「ん?」


「だから帰りの話だよ。」


「………あっ、うん。社長が忙しいみたいで。」



隣で煙草を咥えているのは健人ではなく、同期の奥寺だ。


ニヤリとした奥寺に眉間の皺を寄せて見上げる。



「別れも近いとか?」


「違います!」


「どうだか。前は毎日一緒に帰ってただろ。途端に帰らなくなったって事は………。」


「何よ。」


「釣った魚に餌をやらない………か?」



奥寺の言葉に口を閉ざした。



「長嶺、嘘だ。落ち込むな。」


「落ち込んでない。当たってるかも?って。」


「あの社長に限ってない。長嶺を溺愛してんのは誰でも知ってる。」


「それは今まで。」


「いや、今も。」



奥寺が私の頭を激しく撫でるので、その手を掴んだ。



「奥寺、止めて。髪が乱れ………。」


「花菜。」



扉から聞こえた声に視線を向ければ、目が笑っていない健人が立っていた。
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