社長の甘い罠～いつしか当たり前に～ ＋ 番外編

「……な、かな、花菜。」


「ん………。」


「会社に遅刻する。」


「ごめん、目覚まし鳴った？」


「疲れてそうだし、俺が止めといた。」


「ごめん、健人。」



ゆっくりと体を起こして伸びをした。



「ほら、会社に遅刻する。」


「うん。」



ベッドから洗面所に向かう。鏡を見れば、ボサボサの髪の私が映っていた。


鏡の自分に話し掛ける。



「こんなんじゃ………ダメだね………。釣った魚に餌をやらない……か……。」



大きな溜め息が漏れる。



「女子力か………。」


「花菜？」



健人の声にボサボサの髪を手櫛で急いで直して振り返った。



「何？」


「ご飯が出来てる。急げよ。」


「あっ、うん。今行く。」



急いで顔を洗い、もう一度鏡の自分を見つめる。



「忙しくてケアしてないな。ふぅ～、ダメだね。」



一緒に帰らなくなった健人。


私への愛が薄れ始めてる？