社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編
鏡を見つめて大きく深呼吸をした。



「よし!仕事が一段落したら磨く!」



気合いを入れて、リビングへ行こうと扉の方に体を向けて驚いた。


健人がじっと私を見つめていたからだ。




「磨く?何を?」


「えっ?いや…………ね?」


「何を?」


「ほら、最近、女子力が落ちてるから。」


「………女子力ね………。」



健人がリビングへ向かう背中を追い掛けるように、私もリビングへ向かう。


ダイニングに並べられた料理に胸が痛む。



『最近、健人に任せてばかりだな。』


「花菜?本当に遅刻する。」


「あっ、うん。」



急いで朝ごはんを食べて、当たり前のように健人の車で出社する。


外の流れる景色を見つめれば、早足で会社へ急ぐ人達が目に入る。



「わたし………甘えてるね?」


「…………花菜?」


「ううん、何でもない。」


「………。」



健人の沈黙に目を閉じた。


ゆったりと車通勤なんて贅沢だ。
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