社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編
「長嶺。」



声を掛けられた方を振り向けば、休憩に行こうとしている奥寺がいた。


煙草を片手に持ち上げて、私を誘っているようだ。


私は小銭入れを持ち、奥寺と自販機のある休憩所に向かった。


私は紅茶を片手に持ち、奥寺と誰もいない喫煙所に入る。



「溜め息…………長嶺、どうした?」


「ん?」


「大きな溜め息が聞こえた。」


「ふふっ、聞こえた?」


「バッチリと。」



私はクスクスと笑って奥寺を見上げれば、真面目な顔で私を見下ろす奥寺の瞳と交わった。


笑うのを止めて、奥寺から視線を外した。



「一人で何でも出来る社長と付き合ってみたら、一緒にいる私が不甲斐なく思えてきて…………。」


「今朝の話しか?」


「うん。奥寺は彼女の為なら、何でも尽くしたい?」


「………どうかな?俺は尽くすタイプじゃないっぽいし。」


「尽くしてばかりじゃ疲れない?」



チラリと奥寺を見上げれば、煙草を咥えて天井を見つめていた。
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