社長の甘い罠~いつしか当たり前に~ + 番外編
「花菜。」



怒ったような声に私と奥寺の体がビクリと揺れた。


喫煙所の扉に立つ社長の顔が怒っている。



「長嶺、俺は行く。直接、社長に聞いてみろ。」


「奥寺………。」



社長に軽く頭を下げ、奥寺が喫煙所から出ていく。その後ろ姿をじっと見つめていたが―――。



「花菜。」



突然、視界が塞がれ、見上げれば社長が私の前に立っていた。


見たことのない社長の雰囲気に一歩後退りした。



「花菜。」



聞こえてきた声はやっぱり怒っているような感じだ。


社長を見上げれば、私を見下ろす社長の目と交わる。



「花菜、奥寺と見つめ合ってたか?」


「えっ?違うよ。ただ話してただけ。」


「何を?『止めれば?』って何を?」


「…………。」



社長の指が私の指に絡まる。



「花菜、逃がさないから。」


「…………。」



社長の言葉に息を呑んだ。
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