わたしは一生に一度の恋をしました
 わたしと三島さんは地元では比較的大きい総合病院に向かった。その三階に由紀さんは入院しているそうだ。

 彼女の部屋番号まで行くと、名前が一つしかないのに気付いた。どうやら個室のようだ。
 三島さんと目を合わせると、彼がノックした。

 返事が聞こえ、真一が部屋か出てきた。真一はわたしたちを見ると、何か言いたげな表情を浮かべたものの目線を下に逸らした。

「ちょっと向こうで話がある」

 真一の話を遮ったのは明るい女の声だった。

「将、来てくれたんだね」

 真一は眉間にしわを寄せると三島さんを見て、彼に部屋に入るように目配せした。

 三島さんは一度だけ頷くと、部屋の中に入っていった。

「真一、将に何か飲み物を買ってきてあげてよ」

「まだ藤田が外に」

 そう言ったのは三島だった。部屋の中の様子は見えないが部屋の中の張り詰めた雰囲気が伝わってきた。

「そう。中に入ってきたらいいわ」


 先ほどとは同じ人と思えないほど、抑揚のない声が耳に届いた。
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