わたしは一生に一度の恋をしました
 わたしは家に帰ると、ベッドに倒れ込んだ。そのとき、冷たいものがこめかみを横切るのが分かった。わたしは目元を拭い、苦笑いを浮かべた。

 由紀は口には出さなかったがいつからかわたしという存在をずっと恨んでいたのだ。ああなるまでわたしは気がつかなかった。

 自分の未来ばかりを考えてきたばちが当たったのかもしれない。
 せめて三島さんと距離を取っていたら。

 後悔はとりどめもなくわいてくるが、今のわたしにはどうすることも出来なかった。

 真一がわたしの元を尋ねてきたのはその日の七時過ぎだった。おばあちゃんに話を聞かれたくなかったこともあり、真一を部屋に通すことにした。

 彼はわたしの差し出したコーヒーを受け取ると、短くため息を吐いた。

「まさか由紀があんなことを言い出すとは思わなかった」

 わたしは首を横に振った。

「当然だよ。一歳しか歳の離れていない父親の子供が突然出てきて、自分の家族をめちゃくちゃにしてしまった。その上三島くんと一緒にいすぎたんだよね」

「由紀は甘やかされて来たから、自分の思い通りにならないと癇癪を起こす。昔からそうだった」

 真一は深い溜め息を吐いた。
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